免許更新

実は11月のとある日に還暦を迎えた。60歳になった・・というわけだ。
職場の後輩が、「Happy birthday」を歌ってくれ、記念の時計をプレゼントしてくれた。「とても還暦とは見えないんですが・・・」と言われ嬉しかった。私の会社は65歳が定年なので、ここで引退・・ではなくあと5年、いつもの日々が続くわけだ。

そんなある日、早起きして免許の更新に行ってきた。今年は自動車免許更新の年。8時30分からの受付けだが8時頃到着。講習会も30分で終了。「免許証を受け取ったら記載事項に間違いがないかどうか確かめてください」と言う言葉を背に部屋を出て窓口へ。新しい免許証を受け取った。
今の免許証を持ち帰りたい時は窓口で申し出るとよい・・・と何かで読んだ。「よし。今年は持ち帰ろう。」と思っていたので、窓口で「この免許証を持ち帰りたいのすが」と申し出た。「少々お待ちください」と言われて間もなく、2つの免許証、パンチで穴開けされた旧免許証と新しい免許証を受取った。何気なく2つの免許証に目をおとす。「え!!!」ギョッとした。

「これが私? 私じゃない!」

そこには今まで見たこともない、おばちゃんが写っていた。まるで使用前・使用後だった。そういえば・・・5年前の記憶がよみがえる。5年前、ドキドキしながら新しい免許証を受け取った。だが意外に写りがよかったので「ま、こんなもんか」と、ほっと胸を撫で下ろした記憶がある。まるで『案外若いね』って言われたかのようだった。まぁ、気分まで若返ったのでいい気なものであるが。うっかりしていた。時は止まってくれないのだ。5年前の私より確実に年を重ねた私が、そこにいた。

そういえば、90歳過ぎた祖母が、居眠りから目が覚めて偶然鏡に映った自分の顔を見て、
「まぁ、どうしたの。髪は真っ白。こんなに年を取ってしまって」って、まるで浦島太郎みたいな台詞を言ってたな。「いつもと同じなんだけどなぁ」って思ってたけど。

日頃外出することもない祖母は、鏡を見ることも、髪をとかすこともなかった。ふとした時に自分の老いに気付き驚いたのだ。まだ若かった私は、祖母のリアクションを単に笑っていたのだが、あの頃の、99歳まで生きた元祖おてんば娘の祖母は、人生終盤何を考えて生きてきたんだろう。もっと話をすればよかったな。

 来年、中学の還暦学年同窓会を企画している。今年は準備が間に合わなかったので来年にしたわけだが、1年後で良かった。今からじっくり時間をかけてピカピカに磨いていこう。もちろん中身も磨かねば。そして5年後の免許更新の時には、にんマリと笑って免許証を受け取られるように今から準備しておこう。

『今日という日は残りの人生の最初の日である』

5年後、10年後どんな顔になっているかな。さあ、仕切り直しだ。